「ごほんですよー: 2011年8月」アーカイブ

「馬場のぼる こどもまんが集」

File0004.jpgのサムネール画像今のこどもたちはコロッケは好きなんでしょうかねえ?私は昔から大好きです。
以前、このコーナーで馬場のぼるさんの人気絵本「11匹のねことあほうどり」を紹介し、私は次のようなことを書きました。

「馬場のぼるさんは、実は子どもの頃の私も大好きな『漫画家』でした。もう40数年以上も前でしょうか、馬場のぼるさんの『コロッケらいおん』という作品や『たらふくまんま』という作品(これは少し後だったか?)を楽しく読んだことを記憶しています。
『東京タワー』ではありませんが、当時はまだ戦後の貧しさを引きずった時代で、『コロッケらいおん』のコロッケが何とおいしそうだったこと。『あほうどり』をはじめ馬場のぼるさんの現代の作品にも頻繁にコロッケが登場するのは、コロッケなど当時の食べ物にたいする馬場のぼるさんの強い思い入れがあったのではないかと思っています。」と。

今回、11匹のねこシリーズの発行元のこぐま社から、この思い出の『コロッケらいおん』などが収録された『馬場のぼる こどもまんが集』が刊行されました。とても嬉しかったので、改めてぜひご紹介しようと考えました。
馬場のぼるが「絵本作家」である前に「漫画家」であったことは、今では案外知られていないかもしれません。
この作品には、コロッケしか食べないやさしいライオンのお話「コロッケらいおん」をはじめ、1950年代のこども漫画誌に掲載された「ポストくん」など人気シリーズが収録されています。
どこかほんわかとして、疎外された人々にも暖かな視線をむける人間味溢れる馬場のぼるの作品は、「懐かしいなあ!」と感激する私のような世代から、初めて馬場作品に接する子どもたちにもきっと楽しんでもらえることでしょう。
本書は、馬場のぼるが亡くなって10年を記念しての刊行なのだそうです。過去1970年に馬場のぼる集が刊行されたことがあります。私はそれを大事に持っていたのですが、どうした訳かなくしてしまいました。    

 馬場のぼる・著 こぐま社・刊


『愛しの座敷わらし』

File0006.jpg座敷わらしは東北地方の民家に住むというこどもの妖精。宮澤賢治の作品や柳田国男の『遠野物語』などにも出てきますが、悪いことをするのではなく、座敷わらしの住む家は繁栄し、いなくなると没落するのだとか。その座敷わらしが現代の家族の前に現れたとしたら...?
主人公の高橋晃一は、どうやら左遷されたらしい。この際、心が離れはじめた妻の不満をかわしながら、あこがれの田舎暮らしを決行、東北の古民家に住むことになりました。
妻・史子と中学生の梓美、小学生の智也、高齢の母・澄代、犬のクッキーも一緒。これまでは仕事人間で、家族とは会話もなかった。これからは出世など気にせずに家族と生きていこう、と決めたはずでしたが、現実はそう甘いものではなさそう。 
晃一は相変わらず会社からは遅く帰るし、妻の不満もつのるばかり、思春期の梓美は死んでも良いほど孤独だし、高齢の澄代は認知症かもしれない。ただ、智也だけが元気に遊んでいる時に、家の中で4、5才ほどの小さな男の子と出会います。
けん玉で無邪気に遊ぶ男の子は、バアバには見えるけど、お姉ちゃんや他の家族にはいつもは見えないらしい。ところが、遊んでいるうちに男の子は、梓美や史子の鏡に写ったりして大騒動に。晃一とは会話もなかった梓美は、自分の頭がおかしくなったと思いこんだ史子を支えるために奇跡のタッグマッチ。自分がしっかりしなければと自覚した祖母・澄代は、智也と一緒に毅然として座敷わらしの存在を家族に告げて・・。
気がついてみれば、座敷わらしのおかげで高橋一家は次第に家族の絆をとりもどしていたのでした。やはり座敷わらしは幸せをもたらす妖精?


この作品は、すでに映画化が決定し、来年の五月連休に公開予定だそうです。高橋晃一役は水谷豊さんが演じることになっているそうです。本書の解説に水谷さんは「読み終わって僕が感じたものは、まるで清々しい風だった。幸せとはこういうことなのか・・・と思わせるような」と書いています。                       
著者の荻原浩さんには、幼稚園の子どもたちと高齢者が「共闘」して横暴な高齢者施設経営者らと闘うという奇想天外な作品『ひまわり事件』でも楽しませていただきました。団塊の世代の老いの問題や若年性認知症問題など社会的な課題もさりげなく盛り込まれた作品で、未読の方は併せてお奨めいたします。
ところで、作品に登場する座敷わらしは幼児であり、かつて不条理にも家族と共に生きることのできなかった子どもの霊が現れたものだと語られます。あの東日本大震災でも、きっと数多くの幼い子どもたちの不条理な死があったことでしょう。願わくば彼らの全てが座敷わらしとなって、高橋一家のような家族とともに幸せを得られることを祈らずにはいられません。

荻原浩・著  朝日文庫(上・下)刊 

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