「ごほんですよー: 2013年7月」アーカイブ

『ネジマキ草と銅の城』 

あなたは小さい頃、ご両親(あるいはおばあちゃん?)などに本を読んでもらいながら時間をすごしたことがおありですか?

ネジマキ草1.jpg

もしそうした時間をお過ごしなら、すばらしいことですね。きっと思い出すだけでも幸せな気分になれるのではないでしょうか。

読んでもらったのはどんな本でしたか?

そんな子どもたちが、もっと読んでといいながら、いつも眠ってしまって、翌日にはつづきを読んでとせがむ、そんな光景にふさわしい本ってどんな本でしょう?

今日ご紹介する作品は、そんな時にもってこいの本だと思います。

 

はるかな昔、光り輝く銅の山々に囲まれて銅のお城がありました。お城には年老いたマンソレイン王が住んでいました。王のあごひげはすばらしく、広がったひげの上では、今ではただ一匹仕えているノウサギが眠っています。

千年もの間、国じゅうの生き物を治めていた王は、明日をも知れぬ重い心臓病を患っており、王の命を救えるのは「ネジマキ草」という薬草だけ。心配するノウサギに、まじない師はネジマキ草を見つける間、王の心臓のねじを毎日巻きなおして命をつなぐのは、胸をわくわくさせる物語だけなのだと言い残して何日もの旅に出ます。

まじない師が旅に出た後、心臓を患う王様の銅のお城には、オオカミやリス、カモやライオンなどが次々にやってきて、昔の闘いや冒険の物語を語り続けます。まじない師はネジマキ草を見つけて無事に帰ってくることができるでしょうか。

 

オランダを代表する児童文学作家パウル・ビーヘルがこの作品を発表したのは1964年のこと。「枠物語」と言われる形式を使いこなし、不朽の名作として受け継がれてきたこの作品を、コロボックルシリーズで知られる村上勉さんの挿絵で2012年に福音館が新たに刊行しました。

 

かつてあなたが経験した幸せな時間を、この作品を通して、ぜひ今の子どもたちやお孫さんに受け継いであげて下さいね。

著者 パウル・ビーヘル 訳者 野坂悦子 福音館書店

 

『鳥類学者 無謀にも 恐竜を語る』

かつてマイケル・クライトンの『ジュラシックパーク』を読んでいて、その最後のシーンで、復元された恐竜たちが「渡り」を待って並んでいるというシーンが描かれていたと記憶しています。

鳥類学者1.jpg

恐竜が鳥の子孫であることを示唆していて「渡り」の結果、復元された恐竜たちは別の地域で再び人類の脅威となるのを暗示させるシーンでした。

1993年に公開された映画「ジュラシックパーク」も公開されるとすぐに、娘と一緒に見に行きましたが、映画で登場する凶暴な「ベロキラプトル」も、キョロキョロと鳥のような頭の動かし方をして妙に真実味があったことを覚えています。ただし彼らに羽は生えていませんでした。

 

しかし1995年、中国遼寧省でついに羽毛恐竜の化石「シノサウロプテリクス」が発見され、その後も次々に羽毛恐竜の発見が続きました。もはや「恐竜は鳥と類縁関係にある。つまり鳥は恐竜なのだ」ということがはっきりわかってきたのです。

 

こうした中で、本作品は鳥類の研究者である著者が「鳥類と恐竜の緊密な類縁関係を拠り所とし、鳥類の進化を再解釈することと、恐竜の生態を復元すること」を主眼に書かれました。

著者は「恐竜は、いくつかの幸運な例を除いて、基本的に骨の形態しか知ることができなかった。しかし、鳥が恐竜の一系統であるとなると、現生鳥類を調べることによって、恐竜の生活をより信頼性高く類推することが可能となる」と書いています。

 

現生の鳥の生態から考えれば、きっと色が真っ白な恐竜もいたに違いない。鳴き声は?毒があったか?何を食べたか?渡りは?巣はどこに?などなど。化石からだけではわからない謎を、鳥類学の視点から検討すると、恐竜の生態が見えてくるという訳です。

 

標題に「無謀にも」とありますが、とんでもない。長年の鳥類研究の成果を基礎に、出会ったこともない恐竜の世界を生き生きと?ユーモアあふれる語り口で、描いてくれています。

「恐竜の生活を類推するためには、現生種で最も近縁と考えられていたワニと比較することが多かった。(中略)そこに、直系の子孫である鳥類が登場したわけだ。『貴方の子どもよ』と突然現れる美人恐竜学者とその腕に抱かれるニワトリ、目に見えてうろたえるティラノサウルス、という一幕が頭によぎる」

「さて鳥と恐竜に類縁関係があるということに、どういう意味があるのだろうか。まず、冬の寒い日に家族みんなで水炊きを食べるとき、お父さんが息子に『これは恐竜なんだぜ』と語りかけることができる。」という具合に。

「生き物と鉱物が好き」な、イラストレーターえるしま・さくさんの鳥や恐竜たちのイラスト等も交えて楽しい作品となっています。

 

そういえば、鳥が恐竜の子孫だという考え方は、北九州市のいのちのたび博物館にも反映されていて、今年3月にリニューアルした後、ディロングなど羽毛恐竜たちの展示が追加されました。

先日訪れた折り、リニューアル前から展示されていたベロキラプトルには、羽が生えていて、何ともかわいらしい姿に変わっていましたっけ。

 

この本を読んでから、この夏休みにでも、いのちのたび博物館におでかけになってはいかがでしょう。「スー」の愛称で知られるティラノレックスの巨大標本などとともに、羽毛恐竜たちに出会えますよ。

著者 川上和人 技術評論社刊    (2013年7月)

最近の記事


月別アーカイブ