「ごほんですよー: 2015年11月」アーカイブ

「白をつなぐ」

さあ駅伝の季節です。全日本大学・高校・中学駅伝から、年が明けて、実業団駅伝・箱根駅伝、そして都道府県対抗駅伝と、ぞくぞくと大きな大会が続きますね。

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私も箱根駅伝ファンの一人ですが、2年前、シード常連だった母校の中央大学が、まさかのシード落ち。翌年は、シード権復活だと確信した時、最終ランナーが失速して、またもシードを逃す事態に。数々のドラマを生みながら、懸命にタスキをつなごうとする選手たちの姿には、いつも感動させられます。

一月は、郷土の誇りと意地をかけて中学生から高校生、一般の選手がタスキをつなぎ走り抜ける都道府県対抗駅伝大会も楽しみの一つですね。

 

今回取り上げた作品、まはら三桃さんの「白をつなぐ」は、毎年1月に広島市で行われる都道府県対抗男子駅伝(天皇杯)に出場する福岡県代表の物語。

 

1区、いたずらっ子の俊足高校生、澤田瞬太。2区、たすきのトラブルを補欠の斉藤湊選手に救われる中学生、山野海人。3区、失恋の危機に見舞われたスター選手、水島颯。4区、「無心」を会得する歴史好きの高校生、谷山林太郎。5区、ライバルと激走するチャラ男高校生、川原大輝。6区、熱血コーチの進退をかけて走るも、まさかの脱水症状で棄権を余儀なくされる中学生、佐々木和。最終7区、有名チームの付属品とよばれてきて引退を決めた駅伝で、走る喜びを見出した孤高のベテラン社会人ランナー、吉武弘一。

県代表の「赤いたすき」を懸命につなぎながら、各選手たちが感じた「白でつなぐ」ことの意味とは?

選手たちそれぞれのドラマと胸に抱く思いを、まはら三桃さんが、軽快なタッチで描いて行きます。

 

現在、福岡市在住のまはら三桃さんは、スポーツやものづくりなどにひたすら打ち込む若者たちの姿を描いて、人気を博している気鋭の児童文学者。

三浦しおんさんや萩原浩さんを思わせるユーモアあふれる軽快な作品群は、きっと色々な青春の一場面で悩んだり迷ったりしている中学生高校生などの若者たちを励ましてくれることでしょう。

中学生・高校生等むけの良い作品が少ないと言われる昨今、これからも大いに活躍してほしい作家です。

 

ところで、作中の福岡県代表が正月4日からの合宿するのは北九州市の鞘谷陸上競技場。熊沢監督も北九州育ちという設定で、将来が有望な中学生・佐々木和のコーチ、スキンヘッドのこわもて八谷光司は北九州弁丸出しで大声を上げますし、山野海人選手の祖母は、小倉が長崎原爆投下の第一目標だったのだと語ります。

実は、作者のまはらさんご自身が北九州市出身であり、坪田譲治文学賞を受賞した「鉄のしぶきがはねる」をはじめ、多くの作品に北九州市

が登場し、北九州弁が飛び交います。

まはらさんの作品をとおして、多くの若い読者の皆さんが、もっともっと北九州市に親しんでいただければ、私たちにとっても嬉しい限りです。

そのまはら三桃さん、2015年12月19日には北九州市立文学館に「里帰り」されるようです。私も出かけてみようかと思っています。小学館刊。

(2015年11月)

 

天に星 地に花

先日、出身高校の同窓会に、本当に久しぶりにでかけました。

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今をときめく時代小説作家・葉室麟さんや、今回作品を取り上げる帚木蓬生さんは、同窓です。

葉室さんは同学年のはずなのですが、失礼ながら在学中の記憶がないので、同級生の何人かにたずねると、入学後すぐ休学され、卒業が遅くなられたようだとの情報に納得しました。

帚木さんの方は、三年先輩ですが、私と同じ筑後小郡市のご出身。高校卒業後、東大の仏文科に入り、卒業後は会社勤務。ところが九大医学部に入りなおして、現在も精神科医として開業しながら、現在も毎年、違ったテーマで時代を照らす重要な作品を発表されている、すごい人です。

とてもとてもお二人の足元にも及ばない私たちですが、同窓会ではお二人のご活躍が話題となりました。

私は葉室さんについて「きっと直木賞を取る人だと思っていたよ」などと自慢。(本ホームページ別項をご覧下さい。

http://www.serachan.net/2011/06/post-aki.html

友人は、帚木さんが新田次郎賞を受賞した作品「水神」を絶賛し、私は「天に星 地に花」を褒めあげるといった具合。楽しい時代小説談議になりました。

 

その帚木蓬生さんの2014年刊行作品「天に星 地に花」の舞台は、江戸中期の筑後地方・久留米藩。私の故郷・現小郡市も含まれています。

 

御原郷井上村の大庄屋の次男・庄十郎は、父と一緒に、年貢や夫役の軽減を求めて一揆寸前となった百姓の大群を見る。しかし、民を思う家老、稲次因幡の働きで一揆は回避された。

時を経て、庄十郎は村に流行した天然痘に罹り、母も死去。冷たい兄の仕打ちに、追われるようにして村を出た庄十郎は、自分を治療してくれた医師、小林鎮水に弟子入りして医師をめざすことに。修行中、思いがけず、鎮水と庄十郎は、蟄居させられ病を得た家老・稲次因幡の治療にあたり最期をみとる。一人前の医師となった庄十郎のもとに届けられたのは、稲次からの手紙と掛け軸。亡き父が稲次の屋敷で見て話題となった「天に星 地に花 人に慈愛」の掛け軸だった。

再びわき上がる一揆の動き。責任を取らされ処刑される庄十郎の兄、一方、逃亡した妹婿の大庄屋、大石勘兵衛はその後・・・。

 

田植え唄や雨乞い、善導寺の鬼夜、私にも懐かしい宝満川や花立山などなど、筑後の風俗や風景を織り交ぜながら、人の命とは、生き様とは何かをテーマに物語は進みます。

当然ながら作中の会話は筑後弁。私には嬉しい限りですが、ほとんど正確なので、他の地方の読者には分かるのだろうかと、ちょっと気になってしまいました。

前掲の「水神」も同じ筑後平野が舞台。水をひくため筑後川をせき止める大工事「大石堰」の実現にかけた5人の大庄屋の史実に基づいた物語です。もちろんこちらもお勧めです。

集英社刊     (2015年11月)

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